声優が選ばれるための現場のリアル。マイク前の女性声優と、スタジオで演出・ミキシングを行うディレクターとミキサーの制作風景。

はじめに

声優として活動してきた私が、最近、スクール制作の吹き替え作品でディレクターを担当するようになりました。
実際に制作の現場に携わってみると、「演者」としてマイクの前にいた時には見えていなかった、キャスティングの仕組みや考え方が色々と分かってきました。

「どういう基準で選ばれているんだろう?」
そんな、役者なら誰もが一度は抱く疑問に対して、制作サイドを経験したからこそ気づけた視点があります。

声優志望の方、プロを目指して養成所に通っている方、そして事務所預かりや新人声優の皆さんが、一歩前へ進むためのヒントになれば幸いです。

もちろん、作品の形態によってキャスティングの流れは異なります。
アニメ作品などはオーディションで決まることが大半ですし、吹き替えであっても、まずはマネージャーに売り出してもらうことで「最初の一歩」が決まるのは事実です。

ただ、マネージャーに「売り出したい」と思ってもらうための働きかけや、その一歩を掴んだ後にリピートされるかどうかは、演者自身の立ち振る舞いや、制作サイドとの関わり方に大きく左右されます。
現場での振る舞いだけでなく、事務所内での「自分自身の売り込み方」を含めたヒントとして、このコラムがお役に立てるはずです。

「名前」が浮かぶかどうか

制作サイドの視点

まず、吹き替え作品のキャスティングや仕事の紹介を考える際
大前提として「その人のセリフ(声)を聴いたことがあるか」が重要になります。

声を知らなければ、そもそも選択肢として頭に名前が浮かばず、声をかけることができないからです。

ただ、セリフを聴いていなくても、日常の何気ない会話や、その人の見た目、パッと残った印象があるだけで、キャスティングの瞬間にふと名前が浮かぶことがあるのです。

もちろん、お芝居を聴いたことがあればより印象には残りやすいですが、大切なのは、まず自分を「覚えてもらう」こと。
受け身で待つのではなく、制作サイドに自分の存在を認識してもらう努力が必要なのだと痛感しました。

そのためには、現場に出る前段階として、まずマネージャーに売り出してもらう必要があります。

声優の葛藤

私自身、今も声優として活動しているので、アピールすることへの葛藤はよくわかります。

「ガツガツいったら迷惑なんじゃないか?」
「逆に印象を悪くして、煙たがられたらどうしよう……」

役者側の立場では、どうしてもそうした不安がよぎるものです。

「自分を売り込んでほしい」とマネージャーにガツガツアピールすると、
「忙しいのに...面倒な奴だ」と思われるのではないか。
確かに、そう感じるマネージャーもいるかもしれません。

しかし、ここで「嫌われるのが怖いから」と受け身になってしまえば、マネージャーの記憶にも残らず、状況は何も変わりません。

大切なのは、「結果を出して、マネージャーの態度を変えさせる」という覚悟です。
自分を覚えてもらう努力をし、小さなチャンスを確実に掴んで結果に繋げる。
そうなれば、マネージャーにとってあなたは「煙たい存在」から「頼もしいビジネスパートナー」に変わります。

音響監督やディレクターの本当のところ

現場に行った後、仕事のリピートに繋げるのは自分自身の力です。
しかし、音響監督やディレクターに話しかけるのも勇気がいりますよね。
確かに、話すタイミングがいつもあるわけではないため、忙しそうな時に話しかけるのはよくありませんが、チャンスがあったら話しかけるべきです。

私の経験上、音響監督やディレクターに自分から話しかけて、ひどい扱いをされたことは一度もありませんでした。
むしろ「この子はどんな子なんだろう?」と観察していたのではないでしょうか。
「キャスティングするならどういう役が合うかな?」と、職業病的に考えていた可能性も高いです。

少なくとも、ディレクターとしての私はそうです。
ONE to ONEスクールの生徒にはできるだけ現場を経験してほしいと思っていますし、常に役に合いそうな人を探しています。
だからこそ、積極的に自分から話して、その人がどういう子なのかを知りたいと思っています。

まずは、話しかけて自分の存在を認識してもらうことがスタートです。

選抜の基準

候補を選んだり、実際にキャスティングをしたりする際に私が考えるのは、主に
「声質・性格・人柄・実力・対応能力」の5つです。

実は、作品にお金を出してくださるクライアント側は、お芝居の細かな技術まで判別できないことも少なくありません。
そのため「声質」や「雰囲気」といった直感的な部分で判断されることが多いのが現実です。

制作側はそれを見越し、作品のジャンルやターゲットに合わせて候補を絞ります。
例えばラブコメ作品なら、声の「可愛さ」や「イケボ」であることは必須条件です。
この場合、技術の高さよりも「声の良さ」や、演出に柔軟に応えられる「素直さ」で選抜したりします。

芝居を固めすぎてしまう子よりも、周りの役や演出に影響されて変化していける柔軟な子の方が、作品に馴染みやすいからです。
実際、うちのスクールでも、技術的にはまだ未熟でも「役に声が合っている子」を候補に出すと、そのままメインに抜擢されたりします。

選ばれる可能性は一つではない

つまり、選ばれるルートは一つではありません。

  • 役に合っているという「運」
  • 固めすぎず、柔軟な芝居ができるまでの「練習量」
    (最初から素直な芝居ができる場合もありますが、そうではない場合、頭で考えずに芝居ができるまでひたすら練習することが重要です。)
  • マネージャーやキャスティング側との日頃の「コミュニケーション」
  • キャスティング側の好み

私個人としては、「人柄」を一番重要視しています。
一生懸命頑張っている子や、周りに優しい子。
そういった子は応援したくなりますし、小さな役からでも現場を経験させたいと思うからです。

もちろん、ディレクターによっては「ガツガツした野心家」を好む人もいれば、「完全実力主義」で決める人もいます。
また、クライアントの意向で「集客力(数字)が見込める声優」を選抜という場合もあります。

その作品をどう作りたいか、クライアントがどこまで関与するかによっても、正解は毎回変わります。

現場を支える「信頼のライン」

また、制作の現場には「収録時間」というシビアな制約があります。
メイン役に経験の浅い子を登用すると、どうしても収録時間は延びてしまいます。
納品期日を守るためには、脇を固める役には安定感のある実力派を揃える必要があります。

ここで選ばれるのは、日頃から信頼を積み重ねている子です。

  • 演出の意図を瞬時に理解し、対応できる。
  • 日常の連絡や立ち振る舞いに、高い社会性を感じる。

「この子なら大丈夫だろう」と思える信頼感があるからこそ、安心して仕事を任せられるのです。

意外かもしれませんが、メイン役は一度演じると、連続しての起用はクライアントに「飽き」を感じさせてしまうリスクもあります。
一方で、この「脇を支えるライン」は、信頼さえあれば現場の数をこなし続けることができます。

そして、ここに選ばれる確率は、努力をすればするほど上がっていきます。
結局のところ、最後は「信頼の積み重ね」が一番大事なのだと私は思います。

最後に:チャンスは、日常の積み重ねの中にある

ここまで、ディレクターという「選ぶ側」の視点からお話ししてきましたが、結局のところ、キャスティングに唯一絶対の正解はありません。

運やタイミングに左右されることもあれば、制作側の好みに左右されることもあります。
自分ではどうしようもない部分があるのも、この業界の現実です。

しかし、「誰かに覚えてもらうこと」や「現場で信頼を積み重ねること」は、自分の行動次第で今すぐにでも始められます。

技術を磨くのはプロとして当たり前のこと。
その上で、自分という人間を知ってもらう勇気を持ち、一つひとつのコミュニケーションを大切にする。
その積み重ねこそが、いつか巡ってきたチャンスを「次」へと繋げる唯一の道なのだと、制作の椅子に座って確信しました。

ONE to ONEスクールでも、そんな「現場で愛され、必要とされる表現者」が一人でも多く育ってくれることを願っています。

あなたの挑戦が、誰かの脳内リストに届く一歩になるよう、心から応援しています。

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